カテゴリー「(003)小説No.51~75」の50件の記事

[No.75-2]追いつけない自転車

No.75-2

遠ざかる山下君の背中を見つめる。

(見つめる・・・見つめる?)

ハッと我に返る。
「ちょっと、なにするのよ!」
声はもう届かない。
(まったく、もう!)

“憎めない奴”友達には、こんな言い回しをする。
そう、遠回しに・・・。

「気を取り直そっと」

大きく深呼吸してから、もう一度ペダルに力を込める。
(さぁ、追いつくわよ!)
随分と離れてしまった彼を追いかける。

(見えた!)

彼の背中が近づく。
けど、追いつけそうで追いつけない。
そして、背中を見つめながら、分かり始めてきた。

あの感覚・・・。

「わたし、山田君が好きなんだ」

絶対、追い越して見せる。

(No.75完)

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[No.75-1]追いつけない自転車

No.75-1

こんな経験はないだろうか?

自分の前を走る自転車とスピードがほぼ同じだ。
正確に言えば、自分の方が少し速い。
併走しようとしても、少しずつ距離が縮んでしまう。

(面倒だなぁ・・・追い抜こう)

ペダルに、今よりも力を入れた。
更に距離が縮んで行く・・・けど・・・。

(アレ?・・・おかしいな)

追いつきそうで、意外に追いつけない。
意識しなければ、距離は自然と近づいて行くのに。

何だろう・・・。

これって、何かの感覚に似ている。
自転車をゆっくり漕ぎながら、考えを巡らせる。

「遅れるぞ」
「わぁぁ・・・!」

突然、背中を叩かれた。

「お・さ・き・にぃ~」

クラスメートの山下君が勢いよく、通り過ぎた。

(No.75-2へ続く)

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[No.74-2]シャボン玉

No.74-2

「わぁ!ほら見て!」

シャボン玉でこんなに、はしゃげるなんて思わなかった。
高校生にもなって、ちょっと恥ずかしい気もする。

不規則に色が付いたガラス玉のようだ。

表情を様々に変えながら宙を舞う。
けれど、それはすぐに消えてしまい、静寂が戻る。

「ねぇ、卒業したらどうする?」

今まで聞けなかったこと・・・今なら聞ける気がした。

「考えてないなぁ・・・」

彼を責める気はない、お互い高校生だから・・・。

「ごめん、変なこと聞いて。よし!大きいの作るよ」

その言葉通り、大きなシャボン玉が生まれた。
二人の驚く顔を映しながら、それは夜空を駆け上がった。
「が・ん・ば・れ!」
二人の声が重なった。

「どうした?」
「ほら、シャボン玉・・・」

青空に浮かぶシャボン玉を指さす。
あの日、夜空を駆け上がったシャボン玉は、いつまでも消えなかった。

(No.74完)

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[No.74-1]シャボン玉

No.74-1

頬に何か触れた。

(ん、あれ・・・?)

少し頬が濡れている。
一応、空を見上げて見る。
そこには雲ひとつない青空が広がっていた。

すぐにその疑問は解けた。

目の前をフワフワとシャボン玉が踊る。
それに、子供のはしゃぐ声が近い。
その声を目で追う。

「わぁ・・・!」

ひときわ大きいシャボン玉が横切る。
夏の日差しを受け、みずみずしく七色に輝く。
それが風に乗り、青い空を楽しそうに泳いでいる。

あの日と似た光景だった。

「やだぁ・・・何これ?」

狙いは、流行りのキャラクターグッズだった。
それが小さなピンク色の容器に変わった。

「それシャボン玉だよ」
「・・・ほんとだ」

彼と行った夏祭りのワンシーンだった。

(No.74-2へ続く)

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[No.73-2]Sensitivity

No.73-2

無関心で居られるなら、どんなに楽だろう。

(同情心を恋愛と勘違いしている?)

恋愛なんてそんなものかもしれない。
何かの勘違いから全てが始まる。
もし、それが勘違いでも、もう戻れない。
そんな自分を意外なほど冷静に見ている。

「恵梨って損な性格よね」

(そうでもないよ)

そう軽く反論したくなる。
けど、その気持ちをおさえた。

「辛い想いが損ってこと?」

そんなの一般論過ぎる。

それが別の力に変わることだってある。
いつか、そうなることを信じている。
他人に理解されないことが、全て誤りじゃない。

(そうだ!この気持ちを形にしよう)

以前から、ブログで小説を書こうと考えていた。
それを今、実現しよう。

「へぇー、で・・・その小説の特徴は?」

「悲しい結末がないところだよ」

(No.73完)

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[No.73-1]Sensitivity

No.73-1

他人を感じる、自分よりも・・・。

感受性が敏感であることは、むしろ苦しさを生む。
他人の過去を、まるで自分の過去のように感じてしまう。

「恵梨のは、愛じゃなくて同情だよ」

言われなくても、自分自身が一番良く分かっている。

(何とかしてあげたい・・・)

知らぬ間に同情心は恋心に変わる。

相手を知れば知るほど好きになる。
過去が重ければ重いほど、もっと好きになる。

(話して欲しいの?)

(もう、話さないで欲しいの?)

いつも同じ葛藤が繰り返されてきた。

『そんなの、やさしさじゃないよ』

友人の言葉が突き刺さる。

(分かっている・・・分かっている!)

いつしか彼の過去は自分の過去になっていた。

(No.73-2へ続く)

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[No.72-2]変わりない日々

No.72-2

季節の便りに返事を書く。

『頑張り過ぎるなよ・・・』

在り来たりだけど、健康が第一だ。
今まで通り、体も心も元気な便りが一番いい。

『でも・・・頑張れよ』

忙しい日々を送る彼女にエールを送る。
(頑張り過ぎず、頑張れよ・・・か・・・)
相反する言葉をつなげる。
今まで通り・・・そして、今までとは違う日々・・・。
伝えたい適当な言葉がみつからない。

すぐに彼女から返事が届いた。

私のメールを反復するような内容だった。
ひとつひとつ何かを確認するかのように続いていた。
そして、最後にこう締めくくられていた。

『変わりない日々と変わりある日々を』

変わらないでいて欲しいこと。
変わらなきゃいけないこと・・・。

それはお互いに向けられたセリフだった。

(No.72完)

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[No.72-1]変わりない日々

No.72-1

季節の便りが届いた。

自分もそうだけど、最近はメールでの便りに変わった。
メールだから季節感が無いとか思わない。
それを送り主が感じさせてくれることもある。

夕子はかつての部下だった。

今でも節目には、こうやって便りをくれる。
あえて社内メールを使う。
部下と上司、良い意味で距離間が保てる。

『夏祭り・・・』

その先を読まずとも、楽しさを予感させる書き出しだ。

「そういえば、そろそろか・・・」

祭りは祭りでも、公共の祭りではない。
会社の敷地内でちょっとしたビアガーデンを開く。
これをみんなが夏祭りと呼んでいる。

『もうすぐ資格の取得が出来そうです』

彼女は頑張り屋だ。

キャリアアップのために公私共々、忙しい日々を送る。
メールでも十分にそれが伝わってくる。
知りたい、教えたい・・・二人の想いが交差する。

(No.72-2へ続く)

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[No.71-2]気持ち次第

No.71-2

お土産をあげる対象が恋人とかなら話が違う。

それを何にするか、悩むのは義理以上かもしれない。
ただ、この場合、うれしい悲鳴にも似た感覚だ。
その人を想い、あれこれシミュレーションする。

「その想う時間も、お土産のひとつよね」

美穂が洒落たことを言った。

「そうね、お菓子なら気持ちがサンドされてるわ」
「まぁ、甘すぎないようにね」
「あはは・・・そうするよ」

美穂の一言に思わず、笑ってしまった。

気持ち次第で変わるもの・・・。
他にもいくらだってある。
だけど、そう簡単にいかないのも現実だ。
みんなそれで悩んでいる。

「なんか、どうでもよくなってきた」

(お土産で悩むなんて小さいね、わたし・・・)

「二人で食べない?」

昨日買ってきたお土産を広げた。
買わない選択肢も、あげない選択肢もある。

(No.71完)

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[No.71-1]気持ち次第

No.71-1

同じ行為なのに、気持ち次第で感じ方が変わる。
最近、出張が増え、余計にそれを感じるようになった。

「それって、仕事の話?」

ちょっとした私のグチを、同僚は見逃さない。

「仕事と言えば仕事だけど・・・」
「相変わらず、はっきりしないわね!」

気の強い美穂の前では、誰もが“優柔不断”に見える。
相談したつもりが、気付けば責められている。
そんなことが少なくない。

「それで、その行為って何よ?」
「お土産選びよ・・・」
「お・ど・さ・ん?なんでまた?」

ふざけた中でも、突き放してはいない。。

お土産選びは、義理や面倒と言うよりも苦痛に近い。
まずは人数からターゲットが決まる。
定番商品はハズレはないが、喜ばれ方も薄い。

「確かにそれは言えてるね」

珍しく美穂が同意した。
「じゃ、“気持ち次第”って意味は?」

美穂が核心に迫ろうとしている。

(No.71-2へ続く)

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