カテゴリー「(002)小説No.26~50」の50件の記事

[No.50-2]オレンジ色の明日へ

No.50-2

「明日って、何色なんだろうね」

「何よ、急に哲学ぶっちゃって」
友人が、何やら意味深なことを聞いてきた。
「よく、ブルーな気持ちって言うじゃない」
「だから?」
「明日にも、色があるのかなーってね」
(微妙に関係がないように思えるけど)

「何かあったの?」
心配になって聞いてみた。
「ううん、そうじゃないけど、明日が真っ黒なんて嫌よね」
「そりゃそうよ、お先真っ暗なんて」
「だからといって、お先が“真っ赤”じゃ疲れそうだし」
そう言って友人は笑った。

(明日の色か・・・)

会社の帰り道、目の前に真っ赤な夕焼け空が広がる。
何度も見ているのに、今日はいつもと違う。
「明日の色・・・夕焼け空・・・真っ赤・・・」
キーワードが繋がり、あることを思い出した。

「これが明日の色?」

友人にクレヨンを手渡した。
なぜか捨てられない1本が、ずっと引き出しの奥に入れてあった。
幼稚園の時だ。
赤のクレヨンを無くし、仕方なく他のクレヨンで真っ赤な夕焼け空を描いた。
泣きながらクレヨンを握った。
でも、描き終えた頃、笑顔に変わった。

私の色、そして明日の色・・・。

オレンジ色のクレヨンは、それを思い出させてくれた。

(No.50完)

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[No.50-1]オレンジ色の明日へ

No.50-1

「好きな色は、ミドリ色かな?」

こう答えるだけで、好印象を与えられる。
ミドリ色は植物の代名詞であり、森や大地を彷彿させる大自然の象徴だ。
だからこそ連想されるのだろうか。
ミドリ色は、穏やかさ、安心、平和などをイメージさせる。

アカ色は、情熱的な色に間違いはない。
一方では自己主張が強く、他人に対して刺激的な色とも言える。

「男でも誘惑するつもり?」

赤い口紅、赤いドレス、赤い靴・・・。
いずれか1つあれば、そう言われることもある。
怪しげで、危険な匂いが漂う。
車で言えば、スポーツカーは赤が定番だ。
とにかく目立つ色だ。

クロはどうだろうか?
かなり落ち着いた感じがあり、シックな印象は抜群だ。
これも一方では、赤とは違う、独特な自己主張を持っている。

「ちょっと・・・」

全身クロで固めようものなら、なお更コメントしにくい。
高級感がありすぎて、逆に敬遠されることもある。
色々な意味で、近寄りがたい雰囲気のある色だ。

だからミドリ色が好き・・・じゃない。
色の好みは、自分の性格をさらけ出すようで嫌いだ。
だから、無難な色を答え、緑色を身の回りにそろえる。
「無難な好みね」
そう言われると、事実だけに落ち込む。
普通を演じている私を、馬鹿馬鹿しく思うこともある。

(素直になりたい・・・)

でも、“自分色”との出逢いは突然訪れた。
意外なかたちで。

(No.50-2へ続く)

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[No.49-2]上手な恋の忘れ方

No.49-2

一つの結論が出た。

『忘れようとすると、それは美しい想い出に変わろうとする。
美しいものは壊せない、だから忘れられない・・・』

「だったら、元をたどって、忘れなきゃいい・・・ってことね」

なるほど・・・合理的な考えだと思う。
賛同の声が多くあがった。

『で、この回答をした人はどうなの?』

当然とも言える書き込みがあった。
皆が下した結論に合致するか否かではなく、純粋にその真意が気になる。
今度は投稿者を巡っての論議が再燃し始めた。
彼か彼女か、若いのか年配なのか・・・。

結局、その投稿者は姿を見せなかった。

ネットでありがちな“本人と語る”ニセモノも不思議と現れなかった。
それだけ、皆が期待していた、と言うことだろうか。

私も今度失恋したら、これを試してみよう。

「失恋する前に、恋愛しなきゃねダメね」
(変な感じ・・・後ろ向きなようで、前向きなような・・・)
「・・・!」

これが、あの真意なんだろうか。

(No.49完)

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[No.49-1]上手な恋の忘れ方

No.49-1

『上手な恋の忘れ方を教えてください』

ネット上の質問箱に、それは掲載されていた。

恋愛における永遠のテーマ・・・と、呼ぶべき内容だ。
時々、見かける。
偶然目にしたとは言え、私も教えてほしいテーマだ。
どうやら掲載して間もないらしい。
回答は、まだ一つも無い。

女性は男性より、気持ちの切り替えが早いと言われている。
立ち直りが早いとも言えるのだろうか。
でも、そんなの人ぞれぞれであって、私は恋愛に関して言えばむしろ男性的だ。
いつまでも、ズルズルと引きずっている。

数日後、覗いてみると、いくつかの書き込みがあった。
(まぁ、どれもこれも、ありきたりね・・・)
確かに、画期的な方法は期待できない。
そんなのがあったら、大袈裟だけど歴史は変わっている。

一風変わった書き込みが目に付いた。

『恋を忘れたいなら、恋を忘れないようにすればいい』

深い・・・それとも、一見謎掛け風だけど、実は中身はない・・・?
どう解釈していいか悩む。
そのうち、質問よりもその回答に注目が集まっていった。

(No.49-2へ続く)

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[No.48-2]昨日のセンチメンタル

No.48-2

「そうだけど・・・」
「じゃ、どうして?」
はっきりしない彼に、苛立ちを感じる。

「俺たち、無理なのかな」
「そうかもしれないね」
しばらく無言が続いた。
彼は次の言葉を慎重に選んでいるように見える。
それは私も同じことだ。

「じゃ、またな」
(うそ・・・結論は出ていない、ちょっと待って)

「うん」
(だめよ・・・次の約束しなきゃ)

涙がこぼれ落ちるまでの一瞬に、あの日のことを想い出す。
想い出は、その涙と一緒に風に消えた。

「あ・し・た、逢・お・う・ね!」

泣きながら思い切り大きな声で叫んだ。
その声は、涙と一緒に風に運ばれた。

私にセンチメンタルなんて似合わない。

(No.48完)

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[No.48-1]昨日のセンチメンタル

No.48-1

遠くを見る。

感傷的な気持ちになったら、私は近くの高台から遠くを見る。
雑然とした街並みが好き。
夜景のロマンティック感は私には見合わない。

落ち込むほど、気持ちは沈んでいない。
平然としていられるほど、気持ちに余裕もない。
そんな時が、一番心が揺れる。

「じゃ、またな」
「うん」

この言葉を最後に、夏の恋は終わった。
その時は、泣かなかった・・・泣けなかった。
次も逢えるような余韻を残したまま、今でも気持ちは去年の夏のままだ。

薄着の季節になり、夏を肌で感じる。

日差しがより、一層、まぶしい。
夏の熱気が心に伝わる。

「今頃、泣いてどうするのよ」

自分で自分に言い聞かせる。
高台に吹く風は、どこかやさしく、夏の涙を誘う。

(No.48-2へ続く)

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[No.47-2]若葉の頃

No.47-2

そのうち、私が居てもお構い無しにやってくるようになった。

お互いが、無関心を装っている。
その空気がなんとも愉快だ。

ほどなくして、ヒナの鳴き声が聞こえるようになった。
見てみたいけど、私の存在が子育てに影響してはまずい。
多少、迷惑とも言える鳴き声が、逆に嬉しい。

風が心地よい。

ベランダなんて、最も近くて遠い場所なのかもしれない。
相変わらず、親鳥はせっせとエサを運んで来ている。

やがて若葉の頃、彼らは巣立って行った。
ベランダは急に静かになった。

「あれ?巣がない・・・」

「立つ鳥跡を濁さず・・・そんなわけないか」
そう思わせるほど、ベランダの隅は綺麗になっていた。
そう言えば、昨日、めずらしく強風が吹いていた。
主を失った巣が、飛ばされても不思議ではない。

『プルップゥゥ・・・』

次の日、ハトの鳴き声が聞こえた。
急いでベランダに出てみると、一輪の花が落ちていた。

「カスミソウ・・・だよね?」

(No.47完)

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[No.47-1]若葉の頃

No.47-1

やけに近くに聞こえる。

この独特でリズミカルな、そして、ちょっとイラッとする感じ・・・。
もちろん、聞き覚えはある。
どうやら、ベランダからのようだ。
(確認してみよう)
ベランダへ続く扉を開けて、何気なく横を向いた。

「わっ!」

多分、驚いたのは私より、向こうの方だろう。
明らかに目が合った。
そいつは、大急ぎで飛んで逃げた。
(脅かさないでよ、もう!)
存在は分かっていても、いきなりは驚く。
あの慌てようからすると、向こうも相当驚いただろう。

「冗談じゃないわよ、あのハト!」
ここで何をしていたんだろう。
それから毎日のように、そいつはやってきた。
(一体何してるんだろう?)

「あれ?これ・・・」

雑然としているベランダの隅に、ハトが巣を作り、卵まで産んでいた。
(人のベランダに、ずうずうしいわね)
とは言うものの、とりあえず見守ることにした。

(No.47-2へ続く)

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[No.46-2]誰にも染まらずに

No.46-2

一人の男性と知り合った。

こんな私を隠し通すことができないのは分かっていた。
だから、正直に全てを話した。
彼は結婚しているので、さすがに一緒には住めない。
ましてやそんな関係も望んでいない。

私は、何でも相談した。

その度に、温かく応えてくれた。
彼は決して、自分の意見を私に押し付けようとはしなかった。
弱気だからじゃない。

「答えは自分の中にあるんだよ」

以前、彼が話してくれた。
自分を見つめ直すこと・・・。
自分を捨てることよりも、辛くて苦しい・・・。

「一緒に答えを見つけよう」

私の中の私を、彼も探してくれている。
でも、随分と彼を苦しめた。
定期的に襲ってくる感情の起伏を、時として抑えることができない。
それを彼にぶつけた。
その度に、私と一緒に泣いてくれた。

仕事の都合で離れてしまった彼から月に一度、はがきが届くようになった。
いつも、裏面は白紙のままで、何も書かれていない。
そこに、私は“今の自分”を書き込むことにした。
なんとなく、そうしたい気持ちに駆られる。

そして、年に一度、そのはがきを読みに来てくれる人がいる。

(No.46完)

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[No.46-1]誰にも染まらずに

No.46-1

男性と付き合う時、彼が望む“私”を演じてきた。

強制されてはいない、自分で自分を捨てた。
辛くはないし、そうやって今まで生きてきた。

男性への依存が高いことは、自覚している。
昔から男性の間を、転々としてきた事実は、変えようがない。

(追い出されるくらいなら、我慢しよう)

ただ、それを感じ取られると、男性の態度が変わる。
掃除、洗濯、食事の用意・・・。
それを当然のように、要求してくる。

(出て行きたければ、出て行けよ)

言葉にしなくても、態度と表情でそれが伝わってくる。
明らかに余裕がある。
だから、それが腹立たしい。

「出て行けばいいじゃん!」

友人から何度もそう言われた。
一人暮らしができないほど、稼ぎがない訳でもないし、寂しいこともない。
男性への依存、将来に対する不安・・・。
考えれば考えるほど、パニックに陥る。
様々な心の痛みは、私を簡単に解放してはくれない。
だから、出て行きたくても出て行けない。

「助けてくれるなら、誰でもいい」

素直な心の叫びのつもりだった。
でも、男性は下心だけで近寄り、女性は「誰でもいいの?」と軽蔑の眼差しを向けてくる。

「私は誰なの?」
その答えは今も見つからない 。

(No.46-2へ続く)

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