カテゴリー「(001)小説No.01~25」の50件の記事

[No.25-2]受信フォルダ8

No.25-2

振り分けられるメール・・・。

それに、一喜一憂したことが懐かしくさえ思える。
誰から届いたか、分かるからだ。
今でも設定は昔のままにしてある。
孝子には、
「もとに戻す方法を知らないんでしょ?」
と、言われたこともあった。
でも、あえてそのままにしている。
届くはずのないメールを待つために。

「ん?」

ケータイのランプがゆっくり点滅している。
(入浴中にメールがあったのね)
メールが2件届いていた。

「また、孝子でしょ。どうせ」
1件はメインフォルダに、そしてもう1件は・・・。

「うそ・・・」

“受信フォルダ8”に、メールが届いている。

(No.25完)

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[No.25-1]受信フォルダ8

No.25-1

「機械オンチのあんたにしたら、すごいじゃん」

「それ、ほめてるの、けなしてるの?」
孝子の言葉に、つい反論してしまう。

メールをアドレスごとにフォルダに振り分ける機能。
この機能を使ったことに対する孝子の反応だ。
「そもそも原因は孝子にあるんだよ」
孝子のメールは、ほとんどがグチだ。

(どうせ、いつものグチでしょ)
以前、孝子のメールを見ずに消したことがあった。
それも、フォルダごと。
あの時、誤って彼からのメールも消してしまい・・・。

「だから、自己防衛したのよ」
「それとも、あんたのアドレス、迷惑メールに設定する?」
今の私の精一杯の攻撃だ。

「でも、別れた原因はメールのせいじゃないじゃん」

(No.25-2へ続く)

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[No.24-2]一人だけの入学式

No.24-2

(確か・・・この駅だったよな)
ネット上の地図から、あの駅を特定する。
「がっこう・・・学校・・・あった!」
駅の近くに、“音大”と書かれた大学が見つかった。
(多分、これだろうな)

『明日、22時に音大前で待つ』
美紀にメールを送った。

桜並木の見事なキャンパスが、僕らを出迎える、でも・・・。
「ちょっと、遅すぎたな」
そこに、花びらはほとんど残っていない。
花びらが並木道をピンク色に染めている。

「わたしね、この大学に入りたかったの」
それから、その夢が叶わなかった理由も話してくれた。

「だから、今日、本当にありがとう」
「うん・・・桜はちょっと残念だったけど」
「そんなことないよ、ほら」
桜の木の下に、小さな水たまりがある。
そこに、花びらがユラユラただよっている。

水たまりに映る桜は、まるで風にそよぐかのようだった。

(No.24完)

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[No.24-1]一人だけの入学式

No.24-1

「今から、駅に向かうよ」
「分かった、僕もすぐに向かう」

「私ね、つらいことがあると、ここに来るの」
美紀の目は赤く、腫れている。
明らかに泣いた跡だ。
つらいことを聞くべきか、ここに来る理由を聞くべきか迷う。
(でも、“ここ”とは何処なんだろうか?)
駅は単なる待ち合わせ場所に過ぎない。

「この周辺に何か想い出でも?」
美紀に聞いてみた。
「小さい頃、住んでいたことがあるの」
でも、その言葉になぜかノスタルジーを感じない。

「この近くにね・・・音大があるの」

美紀はそう言って、寂しそうな表情を浮かべた。
でも、そもそも、夜の学校で何をしていたんだろう。
その涙に、さまざまな想いが駆け巡る。

(No.24-2へ続く)

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[No.23-2]カエルのご隠居

No.23-2

いじめ、両親の度重なる離婚と虐待・・・。
他にも彼女が話す内容は、どれも衝撃的な内容だったことを覚えている。
初めて話を聞いた時、同情する自分に嫌悪感を覚えた。
(彼女はそんなつもりで話したんじゃない)
だから、彼女と向き合おうと思った。

「逃げずに、私を見てほしい」

菜緒の瞳の奥から、そんな叫び声が聞こえた気がした。

「ほんま、暑い日やね~。カエルさんは大丈夫かいな?」
『カエルだけに、暑いの苦手やし』
カエルはそう言って、テーブルの陰に隠れた。

ある日、偶然にカエルの名前を知ることになった。
「ご隠居さんは、うちで寝てるねん」
(あのカエルは“ご隠居”と言う名前だったんだ)
手のひらサイズの畳の上に、ご隠居が布団をかぶって寝ている写メが送られてきた。
かたわらには“当時のカエル”にプレゼントした、おもちゃのお菓子が置いてある。

そこには、幸せがいっぱい詰まっていた。

(No.23完)

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[No.23-1]カエルのご隠居

No.23-1 [No.07-1]せいじゅうろう

(もしかして・・・)
やはり菜緒が、カエルのぬいぐるみをカバンから取り出した。

見ない振りをすべきか、突っ込みを入れるべきか。
菜緒が初めて、カエルのぬいぐるみを出してきた時は、正直驚いた。
ぬいぐるみ自体ではない。
それを使って、“一人芝居を始める菜緒に”だ。

手作りのようにも見えるそれは、多少色あせた感じだ。
まん丸の体に、服が着せられている。
「カエルさんやで」
彼女の口から、そう聞くまでは未確認生物だった。

『今日、わても暑かったわ』

カエルはそう言って、菜緒が汗を拭くまねをする。
この時点で、だめな人も居るだろう。
単に変わった奴・・・それだけで片付ける人が多いはずだ。
ただ、私には微笑ましくもあり、寂しさも感じる。

(彼女の過去がそうさせているのかな?)
彼女の傷跡をそっと、辿ってみた。

(No.23-2へ続く)

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[No.22-2]感性

No.22-2

「おー、見事なもんだね~」
男性社員達が、歓声をあげた。

「さぁ、今日は吐いてもらいますからね!」
(あんた、刑事じゃないんだから)
お酒の勢いもあり、いつになく葵の追求が厳しい。
「みなすゎ~ん、社内一美人の涼子くわぁら、お知らせでぇ~すぅ~」
(ちょっと!涼子、あんた酔いすぎよ)
そのまま、葵は酔いつぶれた。

地上の荒れ具合をよそに、桜は変わらず美しい。
綺麗、お見事・・・桜を称える声が絶えない。
そう・・・でも、見た目じゃない。

「いい香りがするな」

行き交う人ごみの中から、男性の声が聞こえた。
(これだわ!)
その感性に触れた。

(No.22完)

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[No.22-1]感性

No.22-1

「で、涼子の好きなタイプは?」

(やっぱり、きたか・・・)
話の流れから、私に振られるのは分かっていた。
「べ、べつに・・・タイプはないわよ」
「あ~!なにか、怪しいぃー!」
(やれやれ、めんどうな展開に・・・)
「好きになった人が、タ・イ・プって、優等生みたいなこと言わないよね?」
葵がこちらをジロリとにらむ。
「もぅー、この手の話題は逃げ場なしよね」

葵が言うようなことはない。
好きなタイプはあるけど、なかなか説明しづらいのも事実だ。
それでも、いざ説明を始めると、
「よくわかなんないよ、芸能人だと誰?」
と、いつしか顔のタイプに話が変わる。

特別、個性的な人が好きなわけじゃない。
けど、自分が想い描く“感性”は言葉にならない。

「ま、いいわ。今度のお花見で徹底追求するわよ」

(No.22-2へ続く)

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[No.21-2]四分儀座流星群

No.21-2

「知ってた?」

彼に聞いてみた。
「ああ、結構有名だよ」
あっさり、答える彼にいじわるな質問を続けた。
「じゃ、六分儀座は?」
「ろ・く・分儀座?ろ・くは六?」
(あの時の私と似てるわね・・・ウフフ)

四分儀座を検索すると他に六分儀座、八分儀座があることが分かった。
ちょっと、嘘っぽい気がする。
でも、何となく笑える。
「他に、ないかな?」
更に検索を続けたのを覚えている。

「ほら、町の名前みたいでしょ!」
「一戸とか八戸とか、だね」
彼がすかさず答えてくれた。

毎年、1月が近づくとこの話題になる。
そして、また来年も、この話が出来ればいいな。

(No.21完)

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[No.21-1]四分儀座流星群

No.21-1

「し・ぶ・ん・ぎ・ざ・り・ゅ・う・せ・い・ぐ・ん?」

かたことの外人のようなしゃべり方になった。
「り・ゅ・う・せ・い・ぐ・ん、は普通に流星群でしょ!」
康子から、突込みが入った。

しし座流星群は聞いたことがあるし、つられて夜空を見上げたこともある。
(し・ぶ・ん・ぎ・・・ってナニ?)
初めて耳にする、流星群だ。
それとも、知らないのは私だけだろうか。

「やっぱり、流星群って夜空をいろどるスターよね!」
康子の目が、何かを求めている。
「星だけに、“スター”とでも言いたいわけ?」
あえて、その期待に応えてみた。
「そっ!座布団1枚ぃ~!」
(「座布団1枚~」って・・・あんた、ベタにもほどがあるわよ)

康子の話は別にして、少し気になる。
「そうだ、後でネットで調べてみよう」

(No.21-2へ続く)

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